大好きなお爺ちゃん
(実話をもとにしています) 北海道苫小牧市に一組の老夫婦と一匹の犬が住んでいました。
二人の愛犬「ちゃしろ♀」は、とくにご主人の倉谷高さん(八十五)に、とても可愛がられていました。十五歳。人間で言うと七十六歳の白い老犬です。
ちゃしろは、ご飯は毎食高さんの茶碗から半分取り分けてもらい、夕食後は、庭で晩酌をする高さんの相手をするように横に寄り添っていました。
ちゃしろは何をするのも高さんと一緒で、とくに毎日連れて行ってもらうふるさと海岸の道の散歩は、ちゃしろの大の楽しみでした。
* * *
そんな高さんでしたが、七月末、脳幹出血で急逝してしまいました。残された奥さんは、高さんがいないことをちゃしろに説明しましたが、ちゃしろにわかるわけもありません。
”どうしてお爺ちゃんは顔を見せてくれないんだろう? どこへ行ったんだろう?”
高さんが亡くなってから十日後、ちゃしろは小屋を脱走しました。”きっとあそこだ。いつも連れて行ってくれたからあそこで待ってるんだ”
ちゃしろが向かったのは、いつも高さんに連れて歩いてもらったふるさと海岸でした。ちゃしろはそのまま海に入っていきました。しかし、泳ごうにも、もう十五歳の老体には、無理な話でした。じきにちゃしろは波に飲まれて、海に吸い込まれそうになりました。
ちゃしろはもがきました。
しかし、天国の高さんが「ちゃしろはまだわしのところに来るには早いよ」と思って手を貸してくれたのでしょう。ちゃしろは、なんとか防波ブロックのところまでたどり着きました。でも高さんができたのはそこまででした。防波ブロックは水苔でヌルヌルしていて、ちゃしろは這い上がることができません。いずれ体力の限界が来るのは目に見えていました。
ちゃしろは力を振り絞って高さんを呼び、鳴きました。
ちゃしろにとって幸運だったのは、その鳴き声を、浜の釣り人たちが聞きつけてくれたことです。ちゃしろの声は最初、どこかでカモメが鳴いているようにしか聞こえませんでしたが、カモメの鳴き声にしては少し変でした。やがてひとりの釣り人が、沖の防波ブロックの隙間に白いちゃしろの頭が見え隠れしているのを見つけました。
「犬がいるぞ!」
釣り人は警察に通報しました。もう夕方です。
ちゃしろの力は尽きかけていました。悲鳴をあげてもがくちゃしろの目に、近づいてくる船が映りました。警察が漁協に頼んで、出してもらった船です。ちゃしろは助かるかもしれない、と思いました。早く来て欲しい。
ところが、そんなちゃしろの近くまで来た船は、引き返していきました。ちゃしろは絶望しました。ちゃしろは知りませんでしたが、暗くなると、船が防波ブロックに衝突する危険があるため、それ以上、近づけなかったのです。それくらいあたりは暗くなっていました。
ちゃしろはヌルヌルするブロックにしがみついていましたが、最後の時が近づいて来たことを悟りました。
”お爺ちゃん、ちゃしろも行きます”
その時、船から海に飛び込んだ人影がありました。警察官の加藤さんと北田さんでした。二人は、懸命に防波ブロックまで泳ぎ着くと、力尽きて水面に沈んだちゃしろを引き揚げました。
その後、ちゃしろはブロックに引っ張り上げられて、水を吐きました。ちゃしろは助かったのです。やはり高さんが、ちゃしろに、まだ来てはいけないと言ったのでしょう。
高さんは亡くなりましたが、ちゃしろは今も毎日、高さんのことを思っています。
よかったね、ちゃしろ。
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コメント
読みながら涙があふれました。。。
ちゃしろは助かってよかった。。。
お爺ちゃん、助けてくれてありがとう。。。
でも、あるブロガーさんが言っていたのですが、亡くなった方にお願い事をしてはいけないそうです。
仏様は、オロオロうろたえてしまわれるそうです。
願い事は、神様にすべきなんだそうです。
でも。。。私はいつも父が見守ってくれていると思って、つい父に助けを求めてしまします。
これはいけないことなんでしょうか。。。
なんだかそんなことを考えさせられました。。。
人の情は犬にも通じるのですね。。。
素晴らしい話をありがとうございました!!!
投稿: かずな | 2008.08.20 17:50
ちゃしろ、助かって良かったです。
亡くなったかたは、普通の人が
単に命を失っただけですから、
特別な能力を持っているわけでは
ないと思います。
だから、お願いされてもちょっと……
でも、見守ってくれてはいると
思いますよ。
ぼくが死んだらそうすると思うし。
愛情に人間も犬も関係ないと思います。
ちゃしろは本当に愛されていたんですね。
投稿: >かずなさん | 2008.08.22 15:56