連載小説「蓋」(5/5) 最終回
「わたしの血筋が持つ『力』なのよ。未来のことを読んだり、事を思い通り運ばせたり出来るの。
わたしの場合は、同じく『力』を持つ母が、わたしが二十歳の時、呪文で血を開花させてくれたの。
色々仕事をしてみたけど、『力』が邪魔をしてうまくいかず、結局、『力』に頼って、占い師を始めたのよ。
そしたら大成功で、知る人ぞ知る人気占い師になったわ。だって本物だもの」
「他の人たちは違うのか?」
かほるは笑った。
「ほとんど、偽物よ。お客様にたくさん質問をして、その中から見当をつけて答えてるだけ。
聞いてるほうは胸の内を言い当てられたように思いこむけど、結局、ヒントは全部自分が提供しているのよ。
わたしはノーヒントでズバズバ当てていくから、みんな驚くのよ。
わたしのところには政治家や実業家の秘書さんなんかもたくさん来てたわよ。
でもお客様は皆平等、どんなお偉いさんが来ても、列に並んでもらったけどね。
それから、選挙の立候補者や新事業を始めようとしている人について、この人は国のために必要だと思う場合は、積極的に介入して当選させたり、成功させたりしたわ」
義彦は驚いた。
「そんな『力』があったのか。じゃあ、どうしてこんな回りくどい事をしたんだ?」
かほるはGパンから覗いた膝小僧を、細い人差し指で掻きながら、微笑みを浮かべた。
「母にきつく言われていたの。『力』を自分のために使ったら、次からは『力』をすべて失うって」
「え?それじゃあ…」
「占いをした時には、あなたがわたしを選ぶかどうか分からなかったの。それを追求すると『力』を失ってしまうから。
それに傷つきたくもないし。
最後だから、『力』は有効にい使い切りたかった。どこでどんな風に『力』を使うかは、難問だったわ。」
「じゃあ、おふくろに瓶を送らせたのは」
「そう。あなたのお母さんに蓋の開かない瓶を送らせたのはわたしよ。それでわたしは『力』を失ったのよ。ただの人になっちゃった。
そこから先はひとりの女としての賭けだったの。
その前にあなたのことを予言した時点では、あなたと過去に付き合った人が、この日にここに集まってくるだろうな、ということはわかっていた。
あとは、あなたがわたしのことをどれだけ思ってくれているか、それに賭けたのよ。そのために、どんな瓶だろうと絶対に開けられる道具を持ってきたのよ」
「いっそのこと『力』で、おれの心を自分のものにしてしまえば良かったじゃないか」
「それだけはしたくなかったの。あくまで、自然のままのあなたに決めて欲しかったのよ。
そう考えると、この手順しかなかった…」
『力』を失ってまで…。義彦は圧倒されていた。おれもそれに応えなければならない。
「かほる、おれは、君と結婚したい。きょう、他の元カノたちに会って確信したんだ。おれに一番合うのは、かほるだって」
かほるは少し黙った。
「それでいいの?」
かほるは目を潤ませていた。『力』を失ってから、不安な日々が続いたに違いない。計算抜きの賭けをするのは初めてだったのだ。
義彦は頷いた。
「ありがとう…」かほるは、手の甲で目尻の涙を拭った。
「それにしても、たしかいちど東京に行ったはずだろう。どうして、ここに戻って『占い横町』なんかで店を開いていたんだ?東京の方が儲かるだろう」
「東京にいる時に、新宿の有名な占いのおばさんに見てもらったのよ。そしたらこの町に戻って商売をしていたら、いつかきっとあなたが見てもらいに来るって。
三年かかって、やっとわかった。あのおばさんは本物だったのね」
(了)
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コメント
結果的に不思議な話でしたね~。期待を裏切らず。。。
「力」を持っていたかほる。。。
その「力」を失ってでも、義彦と結ばれたかったのですね。。。
純粋な愛を感じました。
不思議な感動をありがとうございました!!!
投稿: かずな | 2007.04.26 22:06
ありがとうございます。実はうちの冷蔵庫に「開かずの瓶」がありまして、誰も開けられないまま数か月が過ぎています。その瓶を見ていて思いついたストーリーでした(笑)
投稿: >かずなさん | 2007.04.27 09:09
えぇ~っ!冷蔵庫の中の「開かずの瓶」がヒントだったなんて・・・
でも、とても面白かったです! 私もどちらかというと占いは好きな方です。神社仏閣のおみくじ、星占、干支、なんでも良い事は信じてしまいます。悪い時は決して信じません!そんな事ありえないと・・・(=^_^;=)
投稿: ヒバリ | 2007.05.04 22:27
読んでいただいてありがとうございます!
面白かったですか、良かった~。(^_^
ぼくも良いことだけ信じることにしてます。(笑)
そうすればいつも楽しい日を送れますもんね。
またよろしくお願いします。m(_ _)m
投稿: >ヒバリさん | 2007.05.05 00:07